実家では、地下にピアノのレッスン室があります。ここはいわば私の図書室。小学校高学年から中学にかけて、壁に並ぶ「世界文学全集」や夏目漱石、森鴎外、志賀直哉といった邦人作家の全集から気まぐれに選んでみたり(ロシア文学の“人名”には、誰が誰だったかわからなくなってしまって苦労しました)、壇一雄、池田満寿夫などのおよそ子ども向きとは思えない本まで、片っ端から読みあさりました。山口百恵さんの「蒼い時」もあったっけ。ちなみに、とても印象に残っているのは遠藤周作の「沈黙」。一気に読みたいのを我慢して数回に分け(ピアノを弾かないわけにはいかないので)、読み終わってからしばらく作品の世界から出られず、考え込んでしまったのを覚えています。友達から借りたマンガ本も(「超人ロック」から「風と木の詩」まで)、1冊ずつ持って下に運んでは、練習の合い間に読む。少女時代の密かな楽しみ(すなわち、ピアノをちょっぴりサボっていたこと)をここに懺悔いたします。
しかし大人になってさすがに「ピアノを練習するときは集中する!」ことを覚えた私の今の楽しみは、「銀座百点」。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、これは銀座百店会が発行している月刊の小冊子で、対談やエッセイ、連載と、軽く読めるうえ品格があり、とても読み応えがあるのです。年末に帰ると1年分がたまっているわけで、滞在中の私の1日は、まず地下に降りて暖房をつけ、部屋とピアノが暖まるまでソファに座り「銀座百点」を読むことから始まります。
エッセイには、毎回そうそうたる顔ぶれが登場して、構成、文調、まとめかたなども勉強になります。さて4月号をめくると、山本一力さんと対談する関川夏央さんのお写真を発見。関川さん原作の谷口ジローマンガ作品の翻訳をしている関係で、時々メールでやりとりさせていただいているのですが、失礼ながらお顔は存じ上げなかったので、相棒にも見せようと思いこの号を拝借してきました。
そういえば、スペインの出版社への作品選びの必要があったとき、父所蔵の手塚治虫全集の一部(100冊あまり)を無理やり送ってもらったまま、まだ返していなかったな。近々お返ししますから、あと300冊(!)がんばって集めてくださいね、お父さん。しかし、美術全集・文学全集・教育雑誌に英字新聞、なんでもかんでも床に積んでいくのはやめてくだされ。~とはいっても、かの海老沢敏先生の書斎も本がタワーのように高く積みあがっていて、まるでジャングル探検のようだったから、「父も学者タイプなのだ」とポジティヴにとらえてあげるべきか・・・う~む。
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