金曜日, 9月 02, 2005

虫の声

先日、渋谷の沖縄料理店にて友人SYとお食事しました。我ら3人は、8年ほど前に行っていたフラメンコのクラスで1年弱一緒だっただけなのですが、なぜかとてもウマが合い、今でも年に23回のペースで集まっては大いに食べて飲み(3人とも男性顔負けの食べっぷりなのです)、かつ笑いまくって、女子高生も真っ青の盛り上がりとなります。

Sは大手建築会社に勤め、ただ今一級建築士めざして試験勉強中、Yは女性だけの職場でバリバリ働き(その分お休みは年に数日しかない)、自分のマンション購入を計画中・・・という具合に、2人とも初めて会ったころより頼もしくなったけど、いつ会っても全然変わらずピカピカしていて、とっても元気になれる友達なのです。

そのSちゃんはいつも、人とはちょっと変わった点に興味を持つ人。この日も「ミンミンゼミって、5回目で「ミ~ン」が止まるよね!?今度確かめてみて」とか、「ツクツクボウシは『ホーシ・ツクツクホーシ・・・』って、実際はホーシから鳴き始めるよね?!」とか。Yちゃんと私は「う~ん、そうかも」「今度、気をつけて聞いてみる」と素直な反応。それをきっかけにセミの話になりましたが、Sちゃんの疑問はさらに続き「セミって、どーしてあんなに大きな音を出せるんだろうね?なんで?どうなってるの?」

私「羽をこすってるんでしょ?」S「でもさ、それだけでなんであんなに大きい音になっちゃうの?」Y「確かに不思議」

その後、毎日セミの声を聞きながら「ミ~ン」の数を数えてみたけど、時々6回のも7回のもいました。でも確かに、5回で止まるのが平均のようです。

<*ツクツクボウシについて非常に興味深いページを発見!題して「ツクツクボウシはどう鳴くか」。ツクツクあと先問題のほか、鳴き方を「序奏・主奏、変奏、終奏」と分けて曲にした解説も。どういうしくみで鳴いているかもわかります。さっそくSちゃんに教えてあげよう。>

さ て日本語は擬音語、擬態語が豊富ですが、特に「自然」が奏でる音、虫や鳥などの鳴き声の表現がとても面白いと思います。先ほどのツクツクホーシ(つくつく 法師)とかうぐいすのホーホケキョ(法・法華経)、仏法僧(と鳴くのは、ブッポウソウではなく実はコノハズクだそうですが)などと、日常耳にする音を仏教 的に聞いた人たちがいた時代の空気を想像するのが好き。しかしこれ、翻訳の折にはとっても苦労する点なのです。

こ の夏、「日本」がテーマの漫画短編集をスペイン語に訳していたときのこと。ある作品は吹き出しがほとんどなく、パッと見「これは楽!」と思いました が・・・とんでもない。出てくるのはきりぎりす、クツワ虫、松虫、鈴虫、などの昆虫の名前、早速調べてみたものの、スペイン語ではもう大ざっぱに、〈コオ ロギか、バッタか〉くらいの分け方しかないのですね。「あ~ん、みんな“コオロギ”になっちゃう!でも違う虫なのっ、鳴き方が全然違うのよ~ッ」

ま た、日本人なら、松虫は「チンチロリン」、鈴虫なら「リーリーリー・・」と、鳴き声の音色やその季節感まで思い浮かべることができますが、これやっぱり日 本特有の感覚なんですね。ここに<日本>があるのだから、鳴き声もなるべくそのままうつしたいと思うのですが、そうすると、ただでさえ擬音語が乏しい国の 人々がイメージできる「虫の声」の範囲を逸脱してしまい、「何じゃこりゃ?」となりかねない。悩むところです。

さて今年はかなり耳についたセミの声ですが、8月の終わり頃からは地面でひっくり返っている姿をよくみかけるようになり、とうとう聞こえなくなりました。朝夕に聞こえる虫の声も、少しずつうつりかわっています・・・

あぁ、もう夏も終わりなんですねぇ。