木曜日, 11月 24, 2005

世界のキタノの世界

昨日は、なんと日本に帰国して初めて、映画館へ行きました。スペインでは映画館に週1回通った時期もあるというのに・・・なんとも寂しい状況であります。

さ てなにを観たかといいますと・・・「TAKESHIS'」、北野武監督最新作。なにを隠そう、私は北野作品のファンなのです(「HANABI」や 「DOLLS」といった、いわゆる“きれいめ”なものはまだ観ていないのですが)。観たものは全て外国でだったためか、日本にいて観るのとは、もしかした ら少し感じ方が違うのかもしれませんが、ともかく常に新鮮でオリジナル、どんどん進化しているのがまたすごい。
「座頭市」にしても3回見てしまった私としては、この新作にも期待を膨らませまして、開演ぎりぎりに入場。

予 告編で、<SAYURI>(メモリー・オブ・ゲイシャ)の主役があのチャン・ ツィー・イーだということを初めて知り、ちょっと複雑な心境に。チャンツィーイー綺麗でかわいいし(「初恋の来た道」でのあどけなさ、一途さが忘れられな い)、私好きなんですが、この役は日本女性にやってもらいたかったなァ。確か何年も前からこの役公募の話は聞いていましたが、オーディションを重ねた挙句 に結局、日本人ではこれ!という人が見つからなかった、ということなのでしょうか。英語もネックなのでしょうか(さすがに工藤夕貴さんはおさえてます ね)・・・確かに、中国、韓国の俳優さんは「見た目だけ」ではない、才能ある人材が豊富。映画での大画面では演技の深さや質があからさまになってしまいま すから・・日本にも、テレビの枠にはおさまりきれないくらいの演者が出てきて欲しいですね。しかし観るほうが「萌え~」とか言っている世界では、なかなか むずかしいのでせうか。
何はともあれ、コン・リーも久しぶりに見たいし、スピルバーグが芸者の世界をどう描くのか、いろんな意味で興味はひかれました。

ちょっと横道にそれましたが、さて本編。
ス トーリーに関しては、観ていらっしゃらない方のために詳しくは語れない・・・というよりも、語ること不可能?とにかく私個人の感想としていえるのは、たけ しさんの天才を確信したということです。すべてがコラージュされリンクしている手法、かわし、かわしの連続。過去の自作品のシーンまでパロディ(いやオ マージュというべきか)として登場し、わかる人は「にやっ」とできる仕組み。カンヌでも、観客がどうリアクションしてよいかわからずにとまどったそうです が、確かに、理解し難いと思う人も多いでしょう。これまでの映画における北野語も残しつつ、また誰にも追いつけないようなあらたな領域へ、あのいつもの何 でもないような顔でひょいと飛んでしまったような。なにかの番組で「『自分は映画監督だ』なんて思ってない、あくまでも遊び感覚だからこうしてやれてい る」というようなことをおっしゃっていたけど、それがまた天才のなせる業。
映画監督として、なぜか日本ではイマイチ評価されてないのかもしれないけど、これからも大いに期待してます!

木曜日, 11月 17, 2005

秋の夜、ギターを聴く

今日は、ギタリスト荘村清志さん・楽壇生活35周年の記念演奏会。柔らかな響気を持つ紀尾井ホールの空間に、一音一音美しいギターの音がこころよく広がっていきます。レイス、アジャーラ、バリオスといった南米の作曲家の曲、チェコのイルマルの作品や猿谷紀郎さんへの委嘱作品など、盛りだくさんの内容。アジャーラの「南米組曲」からの演奏では、岸田今日子さんが詩を朗読、演奏と朗読が交互にくるという形で、楽しめました。猿谷さん作品とピアソラでは、私のHPにも度々登場しているアコーディオニスト、シュテファン・フッソング氏が共演、ギターとアコーディオンという珍しい組み合わせで絶妙なアンサンブル、素晴らしいデュオを実現していました。(ちなみにシュテファンさんとは、2006年10月の共演が決まりました*今から楽しみです。)

終演後は楽屋口にお邪魔してしばしおしゃべりのあと、帰宅。
予定をやりくりして演奏会に伺って、豊かな気持ちで帰ってこれるって、とても幸せ。素晴らしい演奏にふれるとエネルギーをいただけます。今さらですけど、音楽ってすごいなぁ。

水曜日, 11月 16, 2005

日展散策・横浜の夜

長らくご無沙汰してしまいました。時々覗いてくださっている皆さまに、失礼なことをしてしまい申し訳ありません! では・・・

さかのぼって13日。東京都美術館にて開催中の「日展」に、後援会会員の皆さまとともに伺いました。秋晴れの暖かい日曜日だけあって、上野はかなりの人出でした。着物に道行もショールも必要のない陽気となったので、私もほっと一安心。1時半に入り口に集合したあと、福田千惠(せんけい)先生にご案内いただき日本画のセクションへ。人をかき分けて進みながら、ざわめきのなか福田先生のご説明を聞こうと皆さん耳を寄せます。大作が連なる部屋をいくつか過ぎると・・・ついに、私がモデルをさせていただいた作品<ピアニスト>が目に入りました。

しばらく絵の前にとどまり、鑑賞しながらお話をしていると、まわりにはいつの間にか人だかりが。いろいろな方に話しかけていただき、ちょっぴり気恥ずかしく、でもとても嬉しかったです。
プレイエルという、形に特徴あるピアノの横に、右手を後ろに回して立つ私(といっても私の肖像画というわけではないのですが)、そして背後に“音のシャワー”を表現したという空間が描かれた畳2枚以上という大作と対面して、なんとも不思議な感覚を覚えました。「音のある空間」がそこに留まっている。そこにいる私のような、私でないような<ピアニスト>はなにを思うのか。「右手を隠している」のがなんとも象徴的だ、と感想を述べられた方もいらっしゃいました。私を描きたい、との思いを10年来持ち続け、それを実現してくださった福田先生の強い思い入れを感じ、心から幸せに思っています。
この日ご一緒できなくて、別の日にお足を運んでくださった皆さま、どうもありがとうございました。


15日、横浜のみなとみらい大ホールでの佐渡裕さん指揮・東フィルの演奏会へ。北風が強く、穏やかだった数日前とは打って変わった寒さです。演奏会前に、馬車道の「勝烈庵」にてお食事。ここのカツレツはお肉が柔らかく、全くもたれない。何年ぶりかに来たけど、やはり美味しいです。食後は「馬車道十番館」でお茶、というゴールデンコースのあと、ホールへ向かいました。

少し早く着いたので、佐渡さんにご挨拶するため楽屋へ。夏以来でお会いした佐渡さんは相変わらずエネルギー十分、しかも穏やかなご様子。本番直前、軽食をおとりになっていた最中にお邪魔してしまったにもかかわらず、にこやかにお話してくださいました。

さて本番。イベール「室内管弦楽のためのディベルティメント」という珍しい曲から始まり(佐渡さんがこの曲をお好きだというのがよく伝わってきました!)、次への舞台準備の時間には、佐渡さんがマイクを手に登場!お得意のおしゃべりに客席大受けです。縦笛で「タイガーマスク」のテーマまで披露してしまう姿は、今までの近寄りがたい「指揮者」のイメージを変え、これまでクラシックにあまり縁のなかった人も、オーケストラというものに親しみやすさを感じさせていることでしょう。

ビゼー「カルメン」(第1、第2組曲から)は、これが「フランス音楽」だということをあらためて気づかされる演奏。後半のドヴォルザークの交響曲第8番、いわゆる「ドボハチ」も熱く演じきり、その熱さに思わず、素晴らしかったとの噂を聞いていたNHK交響楽団とのライヴCD<ホルスト:惑星>を購入。会場には、某朝番組のキャスター・小倉智昭さんもいらっしゃっていました。

寒かったけど、いい一日でありました。

木曜日, 11月 10, 2005

お知らせ

ただ今、またもやオフィシャルサイトに問題が・・・申し訳ありません。
そちらでお知らせするはずの情報を、ここに一時的に書かせていただきます。
*今月2日より上野の東京都美術館で開催中の「日展」に、私がモデルとなりました日本画<ピアニスト>が展示されています。作者は、日展評議員の福田千惠(せんけい)さん。会期は今月24日まで。芸術の秋、お手ごろな価格で膨大な数の作品が鑑賞できる「日展」にぜひお出かけください。
*12月22日(木)荻窪・かん芸館で行われる下山静香・グラシアサロンコンサートシリーズ<スペイン音楽はいかが?>第3回「グラナドス:スペイン舞曲集全曲」は、現在予約を受け付けています。クリスマス直前、スペインワインとチーズもお楽しみに。定員55名ですのでお早めに・・・
*季刊のドラえもん専門雑誌「もっと!ドラえもん」2005年冬号(12月1日発売予定)は、<しずかちゃん特集>。ピアノが上手で、ヴァイオリンは好きだけどあまりうまくないというしずかちゃんにちなんで、「クラシック界の静香さん」として登場します。まだ少し先ですが、書店で見かけたら、買ってくださいネ*

火曜日, 11月 08, 2005

スペインの夜に時計は要らない

昨日は建築家・Nさんと1年以上ぶりにお会いすることになり、「スペイン談義にはやはりバルでしょう」と、最近オープンした恵比寿のスペインバルへ向かいました。スペイン料理店とは名ばかりの「・・・え~っ?」というお店も多いなか、ここTio Danjoはスペイン人のあいだでも「とても美味しい」と評判のお店。以前からレストランだったお店の1階部分に、あらたにバルもオープン、しかも私のお友達が今お手伝いしているというので、早く行ってみたいと思っていたところでした。

会うときはいつも「食べる」「飲む」のシチュエーション、私が大いに食べるということはすでによ~くご存知のNさん。混み始める前の6時半に入り、まずワインはボトルでカタルーニャの赤を頼み(・・・銘柄忘れました)、タパスは全部美味しそうなのでシェフにおまかせして、スタートからすでにおしゃべりエンジン全開です。お互いもともとよくしゃべるのですが、お酒が入ってますます調子が出ていきます。ガウディ、バルセロナ、マスコミ世界についてはいつも出る話題、カラヤンとベームで自己表出、演出について、ピカソあたりから“恋愛と芸術”、そして“芸術家は激動の人生を送るべきか”というテーマへ。“芸術のために人生そのものをプロデュースする”ということができるのか。そこに“計算”は入るのか・・・
(注:この間、私は食欲もクレッシェンド)
果たして激動を生きようと意識して生きられるものなのか。「激動」と「破天荒」の定義。自己コントロールにおける創造者と再現者の違い。――― こんなことをぐるぐると廻らせていると、不安定に揺れていた学生時代を思い出してしまいました。

自分でも気づいていない(気づきたくないのかも)面をするどく突かれたりして、時々ひそかにどっきりしながら、何気なく時計を見ればすでに11時。それにしても、おもに“立って飲む”スタイルのバルで4時間半居座り、2人で12皿以上(これ以上だということは確かだけど正確には覚えていない)のお料理をたいらげるなんて、あまりないのではないでしょうか!?(ちなみに前日、父妹と銀座の老舗で食べたイタリアンのコース、美味しくはあったのですが何しろ量がつつましやかで・・・2時間後にはおなかがすいてしまい、急いで補給しなければならなかったのでした)

駅でお別れし、いそいで帰宅。実は恵比寿は私にとって、実ることのなかったある恋の思い出が残る場所。そのせいかまだあまり足を向けられず、この駅に近づいたり遠ざかったりするときにはいつも、切なくなるのです。

帰ったら、思ったよりもワインが頭に効いていて、仕事は手につかず。あきらめて、就寝。。。