火曜日, 2月 28, 2006

こんなアートも

文化庁メディア芸術祭(東京・恵比寿ガーデンプレイス内/写真美術館)に行ってきました。見たところ、館内にはやはりアート系、デザイン系、メディア系の大学生・専門学校生とおぼしきオシャレな若者たちが多かったですが、これぜひ皆さまにお勧めしたい、なんたって入場無料です!

今年で9回目を迎えるこの芸術祭、アート、アニメーション、マンガ、エンターテイメントなど様々な部門で国内外から選ばれた力作、傑作が館内に展示されています。
アニメーション部門の受賞作品(人形美術家の川本喜八郎さん(80歳)が折口信夫の世界を映像化した長編「死者の書」他)は鑑賞できますし(長編の場合、ホールでの上映となるため時間は要チェック)、シンポジウムも目白押し。また“体感”できるアートも多く、一日いても楽しめそうです。見終わって一杯やりたかったらビヤステーションもビヤホールもありますし、優雅に過ごしたいならウェスティンホテル東京もすぐそこ。私、もう一度行くかも。

3月5日まで開催、詳しくは「文化庁メディア芸術祭」のサイトでチェックしてくださいね!

冬も熱い!オリンピック

トリノオリンピックが終わりました。いつになくマスコミが盛り上がっていたような今回の冬季オリンピック、結果的にはメダルは金ひとつとなりましたが、アスリートたちは大きな感動を与えてくれました。ありがとう、そしてお疲れさまでした!

苦戦が続き、もはやすがるような気持ちでみんなが注目していたフィギュア競技。
そして期待通り、荒川静香さんやってくれました、素晴らしかった!彼女は、見ていてなんの心配もなく、もはや“競技”ではなくフィギュアの精が舞っているようでしたね。昨年、あの浅田真央ちゃんに負け続けたことを逆に活かし、曲もコーチも替えるという冒険を決行して、それを全てプラスにしてしまった強さ。「彼女がいてくれたおかげで、忘れていたものを思い出すことができた」といえる謙虚さ、周りに惑わされず自分を見つめられる落ち着き。素敵です。衣装もよかったなぁ。

村主章枝さんの演技には、いつも「今度は何をやってくれるんだろう」とドキドキして引き込まれてしまいます。いつだったかの<ピンクパンサー>も新鮮だったし、今回はスペイン風と、新しいものを取り入れては自分の演技に反映させていく姿がストイックで、とても共感するものがあります。「自分はあくまでも表現者」と言い切る彼女にも、たおやかな外見の奥に秘められた強さを感じますね。彼女もメダルに手が届いても全然不思議ではないと思ったけれど、この“新しい採点方式”って素人にはやっぱりよくわかりませんナ・・・

安藤美姫ちゃんは、あまりのマスコミの加熱ぶりと昨年からの不調、それに対するこころない中傷と、かなり苦しんでしまったのではないかなと想像しています。そのなかでも、スケートに集中しようとすごく努力していたでしょう。オリンピックが終わって、とても晴れやかな顔をしていたのでほっとしました。ミキティはこれから、もっと成長していける歳ですもの、才能あるこういう人を潰さないように見守っていただきたいものです。十代の逸材が控えている日本のフィギュアスケート界、黄金時代はまだまだ続きそうですね。

競技は全部観ていたわけではありませんが、個人的には、スノーボードクロスが楽しかった。また、日本のウィンタースポーツのアスリートたちは(一部を除いて)かなり厳しい状況に置かれている、という問題も表面化しました。資金不足などで練習や遠征も満足にできない選手たちも多いとのこと。オリンピックって何だろう、とふと、思ってしまったのでした。

火曜日, 2月 21, 2006

コンサートのお知らせ


3月21日(火)春分の日、下山静香グラシアサロンコンサートシリーズⅠ<スペイン音楽はいかが>第4回が開催されます。テーマはフェデリコ・モンポウ。~余韻と沈黙のはざまで~と題して、トークをまじえながらモンポウの清冽な音の世界を探ります。スペイン茶菓つき、2時開場、2時15分開演。会場はかん芸館(荻窪)です。空気も緩みだすころ、皆さまのご来場をお待ちしています!

安吾忌

先週は・・・
音楽雑誌「ショパン」の対談記事の取材があり、スペイン舞踊家・岡田昌巳先生のスタジオへ。先生は数日前に公演を終えたばかりでしたが疲れの片鱗も見せず、相変わらずのパワー全開で、1時間半楽しくお話させていただきました。4ページの長寿コーナー<ピアノコンチェルトーク>、掲載は3月20日発売の「ショパン」4月号です*

週末・・・
東京で行われた「安吾忌」に伺いました。今年は坂口安吾生誕100年。ということは、うちのおばあちゃんと3歳しか違わないのか・・・なんだか不思議です。東京の安吾忌に出席するのは2年ぶり。冒頭、安吾ゆかりの地である新潟市(新潟県新津町生まれ)が「安吾賞」を創設したということで、作家の新井満さんが宣言書を読まれました。新潟の関係者の方や、ご長男・坂口綱男さん(写真家)、安吾作品を映画化している手塚眞さんなどとも久しぶりにお会いしました。(あとで参加者リストを見たら、岡野玲子さんも会場にいらっしゃったということが発覚。その気になればほとんどの方とお話できそうなくらいこぢんまりとアットホームな会だったのに、残念!)

前半では、尺八の吉岡龍見さんとギターの中村ヨシミツさんの演奏がありました。尺八もギターも素晴らしく、もっと聴きたい!という感じでした。安吾が力を入れて日本に紹介したサティの音楽からも1曲、お2人でジムノペディの2番を弾かれましたが、尺八とギターですごく合う!あとで吉岡さんにお話をうかがったところ、尺八は“音そのもの”が勝負の楽器だから、サティはすごくしっくりくるのだとおっしゃっていました。桐生(坂口安吾終焉の地)の安吾忌イベントでは、私も昨年、一昨年とサティを演奏させていただきましたが、全曲(結構な数です)を知って俯瞰すると、とても面白い。オリジナルな演出でまた取り組む機会があれば、と思っています。ヨシミツさんにお会いしたのは、金沢かどこかでのお仕事でご一緒して以来、実に10何年ぶり。ギターでの“津軽三味線”も迫真でした。

こんなわけで、年に1回は必ず思い出し、熱烈な安吾ファンの方々のおかげでなんだか身近に感じてしまう坂口安吾さん。20年前に読んだきりの「堕落論」、王道にたちかえってもう一度出してみよう・・・

金曜日, 2月 17, 2006

長崎の旅


先週、長崎へ行っていました。島原、そして熊本側の天草という、長い間弾圧の受難に耐えながら連綿と続いてきたキリシタンの歴史を駆け足で辿る旅でした。

今年は、フランシスコ・ザビエル生誕500年というとても大きな年。スペインはナバーラ出身のザビエルが、遠く日本にたどり着いてキリスト教を伝えたことは知られていますが、日本における西洋音楽事始の粗といえる人物だということはご存知でしょうか?わずか2年少しの滞在ながら、日本に大きな足跡を残したザビエル。そうして日本におけるキリスト教の歴史が始まっていきます。

長崎には、かつては全員がキリシタンだったという村もあり、そこここに素朴な教会が残っていて、今でもその末裔たちが細々と自分たちの教会を守っています。弾圧の時代「踏み絵」の舞台となっていた庄屋の屋敷や神社などを、キリシタンたちが必死の思いでためたお金で買い取り、そこに自らの手で建てたという教会。西洋風の外観から一歩中に入ると畳敷きになっていて、たった今まで信者たちが祈りを捧げていた息遣いが聞こえるような教会。はるかローマへ旅した天正少年使節が学んだセミナリヨ。37000人が非業の死を遂げた「島原の乱」の舞台となった原城跡。・・・旅のガイドをかってくださった神父様が、あまりおもてでは語られない歴史の事実を静かなやわらかい声で説明してくださり、そのたびキリシタンたちの生きた苦しみや、そのなかでも捨てなかった信仰の喜びがリアルにせまってきて、自分の中での処理が難しいほどでした。

1日目は、信者たちが殉教した海が目の前に広がる宿に泊まり、ねずみ色がかって白波をたてる海を見つめました。2日目は荒れる天気のなかフェリーで天草へ。今ならフェリーで30分ですが、あのころどのくらいの時間をかけて渡ったのでしょうか。夜は雲仙へ・・・ここの雲仙地獄も殉教地です。 翌朝は、関西からのカトリック巡礼団のご一行と出発時間が重なり、急きょ、ロビーにあったピアノでミニコンサートとなりました。バッハのコラール・プレリュードから「イエスよ、わたしは主の名を呼ぶ」、そしてスペインの曲を演奏し、皆さまから温かいお言葉をかけていただいたのがとても印象に残っています。

この地の人々は、過去のこととはいえ、身体のなかには迫害した側、された側という歴史が刻まれていて、それをどこかに背負いながら生きているのかもしれません。この問題は今でも、微妙なしこりを残しているようです。
まだまだ多くの訪ねるべきところがあったのですが、それぞれが離れて点在しているため車移動でもなかなか思うようにはいかず、今回は入門編という趣となりました。これを足がかりに、まだまだ考えるべきことがありそうです。

短い滞在でしたが、九州は、関東とは違う文化圏なのだということを実感しました。韓国や中国、台湾にも近く、大昔から外に向かってとても開かれていた土地。南蛮貿易が栄え、鎖国中も国際的な雰囲気が残った長崎・・・鎖国や開国にも、実はこの地方のキリシタン問題が大きく関わっていたというお話を聞き、驚いたと同時に、今までいかに狭い頭で歴史をとらえていたかを痛感しました。

かつての激動の地は、今ひっそりと、海からの風に耐えながら佇んでいます―――