火曜日, 11月 21, 2006

理想的なメセナ体験

昨日は、浅草・吾妻橋にあるアサヒビールの本部ビルロビーでのコンサートに行ってきました。先日、早稲田大学のキャンパスで4時間にわたり開催された、ボルヘス没後20年記念のイベントでお会いした小沼先生がコーディネーターをなさっていて、お誘いをいただいたのでした。

タイトルは<シュトイデ弦楽四重奏団による大島ミチルの世界>。ウィーンフィルのコンサートマスター・フォルクハウト・シュトイデを中心に、同オケの次世代を担うメンバーで構成される素晴らしい弦楽カルテットと、テレビや映画のための音楽でお名前を見ない日はないくらい大活躍をなさっている作曲家の大島ミチルさんという、オリジナリティあふれる組み合わせです。十八番(おはこ)のモーツァルト、シューベルトでは、本場ウィーンの美しく絶妙なアンサンブルを久しぶりに聴くことができて大感激。都会の通奏低音「雑音」に知らず知らずのうちに汚染されていた耳が、正常な状態にリセットされるようでした。大島さんの曲は、前半ではCDにもなっている「For The East」から、後半はよく知られたテーマ曲の数々―――NHK朝の連続テレビ小説「純情きらり」、映画「極道の妻たち」「お墓がない」「北の零年」など―――が演奏され、お客様も大喜びでした。

このコンサートはアサヒビールのメセナ活動の一環で、今回で100回を数えるそうです。有名無名にこだわらず素晴らしい演奏家を迎えて、手作りで15年も続けてきたということを知り、実に素晴らしいことだと思いました。入場希望者はハガキまたはHP上から応募し、多いときは抽選になるということですが、くつろいだ開放的な雰囲気のなか超一流の演奏を楽しむことができるうえ、休憩時間にはドリンクサービスもあるのです。(私はちゃっかりビールをいただきました。)
そして、あらたに導入されたという「市民パトロネージュ制度」(観客は、終演後に自分自身の気持ちに見合うだけの入場料を置いていく)によって、単なる“いただきもの”としてのコンサートではなく、「自分も芸術家を支える一端を担っている」という自覚が生まれていると思います。
このようなメセナ活動が地道に続けられ、定着しているのを目の当たりにして、とても嬉しくなりました。

0 件のコメント: