水曜日, 1月 17, 2007

班女

東京芸大千住キャンパスに、「班女」三島由紀夫作~近代能楽集~を観にいく。
演出をはじめ、ほとんどのスタッフが学生による舞台。授業発表の一環で、学生の中には役者希望もかなりいるらしい。先週の授業で「よかったらぜひ、来てくださ~い」と、いつものほんわかムードで案内を渡してくれた彼女が、思いのほか本格的な演技をみせている。「待たない女」は「待ち続ける女」を虜にし、世界から逃避して生きている。

ときどき、目が入リ過ぎて職人的な“演技”を見せられるとどうも入り込めず、楽しめないこともあるけれど、みんな素直でよかった。それだけにストレートに感じ入ってしまい、20分の休憩が待てなかったわけではないのだけれど、イヨネスコ作「二人で狂う」によって学生が翻案・構成・演出をした演目のほうは失礼してしまった。

さっき聞いた台詞が、耳の奥でくすぶっている。

「待てない人は、逃げるのよ!・・・私は、待つの。待つ。待つ・・・

演技ができる舞台を持つ「役者」は幸せだ。終われば日常に戻ることができる。そして幕があがれば、また違う人生を・・・でももし、日常そのものが演技になりかわってしまったとしたら。信念?信仰?そんなものでもあれば、続けられるとでもいうんだろうか。そしてそこに、観客はいない。あるいは観客までも内包し、世界を抱えたような気分にでもなるのだろうか。

確かな自分を結ぶチャンスも逃がしたような日は、きっといつまでもピアノに向かうしかない。
逃げ込んでなんかいない、と言い聞かせながら。

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