木曜日, 8月 23, 2007

雨までの夜

眠れない日が続く。
眠らなくてはいけない、と思っているわけではないのだけれど、何故眠くもならないのか理解に苦しむ。

東京裁判で被告全員の無罪を主張した唯一の判事、少数意見を貫いたインドのパール判事にスポットをあてたドキュメンタリーを観る。

さえた頭を抱えてとりあえず横になっていると、外から若い男女の言い争う声が聞こえてきた。
午前1時40分。

「裏切られた」「追い詰められたから」「仕方ない」などの単語が聞こえる。どういうわけか、この部屋は窓を開けていると外の声が丸聞こえなのだ。男が女を責めているらしく、早口でたたみかけるように「なぜだ、なぜだ」と問い詰めている。そのうち、女がしゃくりあげ始めた。涙声での応戦。

午前2時過ぎ。
筋萎縮の病気に苦しみ、安楽死を希望して実際に医師の注射により死亡した方のドキュメンタリー。スペイン映画「海を飛ぶ夢」を思い出した。
文楽のエッセイ本を読み終わり、チェンバロ、フォルテピアノに関する厚い本を開く。

午前4時。
今朝は蝉の声が聞こえない。
新聞配達と思われる足音が、遠慮がちに階段を駆け上がっていった。

サーッと前ぶれもなく雨音が走り、ひんやりした風が吹き込んできた。

午前5時52分。風は雨の匂いと、枕元の白檀の香りを運んでくれる。この感覚、この匂いを待っていた・・・私は救われたように雨を求める。これで束の間、何も考えずにいられる。


午前6時半。
全ての窓を開け、蝉時雨の代わりに優しい水の雨を聴く。武満を弾きたくなった。

今日のこよみは、処暑。

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